2025/10/11 コラム
「英語が得意だけど、どの学部に進めばいいんだろう?」 「将来、英語を使う仕事に就きたいな…」
グローバル化が進む現代において、そう考える高校生は少なくありません。しかし、「英語」を軸に大学や学部を選ぼうとすると、その選択肢の多さに迷ってしまうこともあるでしょう。
この記事は、皆さんのそんな進路に関する悩みに応えるためのガイドです。得意な英語を将来「武器」に変えるためには、どのような視点で学部を選べば良いのか。固定観念にとらわれず、戦略的に進路を考えるためのヒントをお伝えします。
まず知っておきたいのは、英語力はもはや外国語学部だけの専売特許ではないということです。文系・理系を問わず、あらゆる専門分野で、英語力は研究やキャリアの可能性を大きく広げる力になります。
例えば、法学部で国際的な法律を学ぶとき、最新の判例や論文はほとんどが英語です。経済学部で世界の金融市場を分析するときも、リアルタイムの情報は英語で発信されます。英語が読めるだけで、他の学生よりも何歩も先んじた深い研究が可能になります。
理系の世界では、英語は「世界の共通言語」です。最先端の技術論文、国際的な学会での発表はすべて英語で行われます。将来、世界的な研究者やエンジニアを目指すなら、専門知識と同じくらい英語力が重要になります。
つまり、もし本当に学びたい専門分野が他にあるのなら、英語力はそこでこそ輝く可能性があるのです。
もちろん、「英語そのものや、英語を使って世界を学ぶことに強い興味がある」という人にとって、英語を専門的に学べる学部は最高の環境です。
しかし、ここでも注意が必要です。「外国語学部」「国際教養学部」「文学部(英文学科)」は、似ているようで、学びの目的も、身につく力も異なります。ここでは、それぞれの学部の本質的な違いを詳しく見ていきましょう。
「英語を話す・聞く・読む・書く」という4技能を徹底的に鍛え上げ、その言語が話される地域の文化や価値観まで深く理解し、高度なコミュニケーションを実現するプロフェッショナルを目指す学部です。
心配は無用です。多くの大学では、入学時にレベル別のクラス分けが行われます。海外経験のない学生も大勢いますし、大学側もその前提でカリキュラムを組んでいます。「英語が好き」という気持ちがあれば大丈夫です。
英語を「学ぶ」のではなく、英語を「ツール」として使い、歴史、政治、経済、哲学など、学問の垣根を越えて幅広く学ぶ学部です。少人数でのディスカッション形式の授業が多く、答えのない問題に対して多角的な視点から自分の考えを組み立て、発信する訓練を徹底的に行います。
「私は〇〇学の専門家です」とは言いにくいかもしれません。しかし、「私は複雑な問題を多角的に分析し、多様な人々の意見を調整しながら、英語で解決策を提案できます」という、より高度で普遍的な能力をアピールできます。
これは、現代のグローバル企業が最も求める人材像の一つです。
英語で書かれた文学作品(小説、詩、演劇など)を原書で深く読み解き、その背景にある歴史や文化、人間の思想を探求する学部です。コミュニケーションのための英語というよりは、作品を正確に解釈し、その魅力を論理的に分析するための、精密な読解力を鍛え上げます。
簡単に言えば、外国語学部が「人との対話(コミュニケーション)」を重視するのに対し、文学部は「作品との対話(読解と分析)」を重視します。
目指すゴールが少し違うのです。
ここまで様々な学部の特徴を紹介してきましたが、「具体的に大学ではどんな学びが待っているの?」と気になった人も多いでしょう。ここでは一つの例として、札幌国際大学の「国際教養学科」を紹介します。
この学科は、アジアに位置する日本の大学として、歴史を見つめながら、自分とは異なる考え方や文化を柔軟に受け止め、理解するための学びを実践しています。まず世界の共通語である英語の習得に力を入れ、さらに学生一人ひとりの興味関心に合わせて専門性を深められるよう、特徴的な3つのコースを設置しています。
英語をベースに、中国語や韓国語も学びながら、様々な国や民族の文化を理解します。
単に語学を習得するだけでなく、「英語を使って」幅広い分野の学問を学ぶのが特徴です。1年次秋学期には約6週間の海外留学がコース必修となっており、早期から実践的に異文化を体験し、語学へのモチベーションを高めます。
文化や歴史を軸に、フィールドワーク(現地調査)を重視したカリキュラムです。
博物館での実習や、京都・奈良を訪ねる研修などを通じて、地域の歴史や文化への理解を深めます。世界遺産に登録された北海道・北東北の縄文遺跡群についても、世界的視点からその価値を探求します。
マーケティングやマネジメントなど、具体的なビジネス事例を通して、グローバルな視点から経済や経営を学びます。世界基準のビジネスパーソンを目指しながら、日本語教師の資格取得も目指せるユニークなプログラムです。
札幌国際大学の国際教養学科では、コースでの学びを通じて、多様な資格取得やキャリアを目指すことが可能です。
ここまで、学部の一般的な特徴と大学での具体的な学びの例を見てきました。
最後に、皆さんが自分にぴったりの学部を見つけるための、重要な問いを投げかけます。
それは、「あなたにとって、英語は『目的』ですか?それとも『手段』ですか?」という問いです。
「英語そのものが好きだ」「英語を使えるプロになりたい」と感じるなら、外国語学部、国際教養学部、文学部が主な選択肢です。それぞれの学部の違いをよく吟味し、自分の興味に最も近い場所を選びましょう。
「英語は好きだけど、それ以上に探求したい専門分野(経済、法律、建築、化学など)がある」と感じるなら、無理に英語系の学部に進む必要はありません。
むしろ、自分が本当に学びたい専門学部を選び、そこで得意な英語を「武器」として使う方が、よりユニークで価値の高い人材になれる可能性があります。
得意な英語は、あなたの未来を切り拓くためのパスポートのようなものです。しかし、どの飛行機に乗り、どこへ向かうのかを決めるのは、あなた自身です。
「英語が得意だから」という理由だけで、安易に進路を決めるのはもったいないかもしれません。自分の知的好奇心が本当に向いているのはどこなのか、そして、その場所で得意な英語をどう活かせば「武器」になるのか。ぜひ、この記事を参考に、じっくりと考えてみてください。